2022年6月に、北越谷駅からほど近い場所にオープンした『ひばり食堂』。
食いしん坊のクワイエメンバーたちは「美味しいカフェができた!」と喜んでいましたが、どうやらただのカフェではないらしい…という情報も入ってきました。
そんな「ひばり食堂」をより詳しく知るべく、運営会社である株式会社Cuddle(カドル)の浜薗浩美さん、中江美咲代さんにお話を伺いました。
『ひばり食堂』はこんなところ
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グリーンの看板が目印のお店までは、北越谷駅から徒歩約4分。 |
清潔感のあるゆったりとした店内。椅子は座り心地◎。席数は16席。 |
ハンドメイド作品の展示販売コーナーは、色とりどりでにぎやか♪ |
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日替わりは外看板にメニューが出ています。 |
取材に訪れた日の日替わりは、ジンジャーポーク。主菜も副菜もお米も、全部が美味しい! |
全て手作りの豆かんてんは、食後のデザートに注文必須! |
■就労継続支援B型事業所Cuddle『ひばり食堂』■ |
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■就労継続支援B型とは?■ |
浜薗さん、中江さんにお話をうがいました
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浜薗浩美さん |
中江美咲代さん |
「ひばり食堂」をオープンした理由や経緯を教えてください
2022年6月1日に「就労継続支援B型Cuddle(カドル)」が立ち上がり、その事業所としてこの「ひばり食堂」がオープンしたのが6月17日でした。
物件が決まってからオープンまで約4ヶ月しかありませんでしたが、業者さんなどいろいろな方からのサポートがありオープンすることができました。
通常、障がいのある方が働くB型事業所というのは、1つの部屋に入って黙々と作業をするというものが多いのが実際です。
ですが食堂という形にすることで、地域の方やお客様に障がいを持った方も当たり前に働いている姿を見ていただき、それが当たり前の社会なんだというご理解をいただきたかったという思いがあります。
実はこちらの物件に決めるまでにはかなりいろいろな紆余曲折があったのですが、諦めなかったのは一人ではなかったからですね。
6名のスタッフ全員が障がいのある子どもの親で、自分たちの子どもが安心して将来働く修業ができる場所を作りたいという共通の思いを持っていました。
現在でも「自分たちの子どもが将来働く場所になる」という思いのもと、DIYで内装に修正を加えるなど手作りでの居場所作りを続けています。
またスタッフが働きやすくするために、子どもの行事や習い事、病院等へ行く際などには連携をして子どもを優先にできるような環境を整えています。
メニューはどのようにして決めていますか
行き当たりばったり、というのは半分冗談で半分本気です(笑)。
調理師と栄養士がおりますので、その日の天気、時の旬や産地を意識しながら材料を選び、その中でバランスを考えながら決めていきます。
人気のメニューはありますか
日替わり定食です。
日替わりというとお店都合のイメージがありますが、私たちの日替わり定食はなるべくお客様の体を労わった内容でバランスよく提供するように心掛けています。
例えば塩分を気にしていることなどを伝えてくだされば、可能な限りで対応します。
お子様やお年を召された方などは、食べやすいような工夫をすることもできます。
お客様のお顔を見ながら、コミュニケーションを大切にした対応ができたらと思っています。
使用する食材には、どんなこだわりがありますか
私たちも畑をやっていますが、提携している菜園や農家さんからも新鮮な野菜を仕入れています。
ありがたいことに、私たちの活動に共感してくださり応援したいと、畑を提供してくださる方もいらっしゃいます。
この畑での作業は就労につながるものとして、今後利用者さんと行っていく予定です。
また、越谷市内の老舗お豆腐店の安全安心なお豆腐やがんも等の大豆製品をつかっていたり、松伏町のお米農家さんの美味しいお米を使用したり、安心な材料の地産地消を心掛けています。
もちろんスーパーに買い物へ行くこともありますが、なるべく土地の物や安心な物を選ぶようにしています。
イベント出店など、地域での交流行事はありますか
今年は初めて「しらこばとマルシェ」に参加しました。
障がい福祉サービス事業所の生産品販売会で障がい福祉サービス事業所等で作られた手作りのお菓子や野菜、雑貨等を販売します。
また、月に2回ほど草加市役所までお弁当販売に出かけています。
これからもいろいろなところに参加していきたいですし、『ひばり食堂』が地域コミュニティの拠点になるという夢を叶えられるよう、活動をしていきたいと思っています。
利用者さんの作業内容について
作業内容については、その利用者さんのできること、やりたいこと、将来就きたい職業などによって様々です。
一人一人の目指すところが違いますので、それに合わせてCuddleの仕事の中から分担して行います。
作業はスモールステップで構いません。
例えば1つの作業に何十分もかかることもありますが、できたという達成感を持つことは、就労した際も途中で諦めずに続けられることにつながります。
また、「就労とは?」というところや利用者さんの“やる気スイッチ”を見つけるところから、ということもあります。
利用者さんの親御さんは、自分たちと同じように、私たちスタッフが障がいを持つ子の親であるということで、安心感を持ってくださる面もあるようです。
私たちの目標は、利用者さんたちがCuddleを卒業して、次のステップへ進んでいただくことです。
「Cuddle」という言葉の意味通り、利用者さんたちに「寄り添った」就労支援をしていきたいと思っています。
実習生の受け入れについて
『ひばり食堂』が6月オープンだったため、今年は支援学校の新卒の方の受け入れができませんでしたが、実習生の受け入れをしています。
実習生はいろいろな受け入れ団体のところへ実習に行き、卒業後にどこで働くかを決めます。
実習は数日なんですが、最終日に「ありがとうございました」と言われると、ここまでの道のり、親御さんをはじめ、医療機関、学校の先生など大勢の方々が応援してくださったと思うと、グッときて泣いちゃうんですよ。
すぐ親の気持ちになってしまうんですよね(笑)。
Cuddleスタッフの活動の原動力は
スタッフは障がいを持つ子どもがいますから、子どもを育てていく中で子どもの課題はもちろん、社会的な課題をたくさん見てきました。
それに対して各スタッフが、小さくても良いから何か自分にできることをやりたいという気持ちと、さらに、その課題に取り組む際に自分の子どもだけが良くなってもだめなんだという意識を持っています。
仕事に対しても、好き嫌いではなく「私たちにできる仕事があるならやっておこう」という共通意識を持っており、それがスタッフたちの原動力になっていると思います。
またスタッフは皆『ひばり食堂』のほかにも、越谷市の「きなり食堂」、草加市の「子ども応援団マイカ」といった子ども食堂やフードパントリーなど子育て支援活動に携わっています。
こういった活動を行う根底には、いろいろな思いを抱えて困っている方たちや悲しい思いをして泣いている方たちが、一人でも幸せになるように、家族が笑顔になるように…という家族目線の思いもあります。
「こういう世の中になってほしい」と願いながら、自分の心を安心させるために動いているという部分もあるのかもしれませんね。
2階の作業所にもおじゃましました
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利用者さんたちの作業所になっている、食堂の2階にもおじゃますることができました。
すっきりとした室内は、外光がたっぷり入る明るい造り。
現在の利用者さんの年齢層は10代から50代で、20名までの受け入れが可能です。
各利用者さんのロッカーには、その日の作業内容などが詳しく書かれたホワイトボードが各々取り付けられています。
お昼ごはんは1階の『ひばり食堂』から持って上がり、給食のようにみんなで配膳しながらいただくそうです。
出窓では、丁寧にお世話をされているメダカが気持ちよさそうに泳いでいました。
草加市庁舎などへお弁当の販売に行く際の箸袋は手作りで、これは利用者さんのアイデア!
お弁当を購入された方からも大好評だそうです。
どれも味のあるイラストばかりで、思わずコンプリートしたくなります(*^-^*)
利用者さんの作業について浜薗さんは、「調理については調理師・栄養士がいますので、身だしなみや衛生面などを教えていきます。
2階での作業については、スタッフが丁寧に声掛けをしながらサポートをしています。
「一人一人の利用者さんが現在どういった状況なのかということを、スタッフ全員で共有することを心掛けています」とおっしゃっていました。
Cuddleの地域貢献活動「コミュニティフリッジ」と「ランドセルリサイクル」
コミュニティフリッジ
「フリッジ」=「冷蔵庫」。欧米で始まった取り組みで、日本では岡山県から始まりました。 支援が必要な親子が時間や人目を気にせず、無人運営の冷蔵庫や冷凍庫へ提供される食料品・日用品を24時間365日、都合の良い時に取りに行ける仕組みです。 埼玉県草加市清門2丁目42-14 |
草加市清門町にある「生鮮スーパーゼンエー」さんがこのコミュニティフリッジを立ち上げることになり、私たち
Cuddleがその運営・管理を委託されることになりました。
大きな仕事としては、ご寄付いただいたお米を小分けにする作業があります。
ご寄付いただくお米は30kgなどの大きな単位であることが多いため、コミュニティフリッジで提供するための小分け作業を利用者さんたちが行っています。
「フードプレゼンター」と呼ばれる、食料品・日用品を提供してくださる方から商品を受け付けるのも、利用者さんの仕事です。
また同じ敷地に設置した野菜乾燥機を使って、フードロスで発生した野菜を利用したドライベジタブルを作る活動も請け負っています。
その作業所の隣にあるウッドデッキを、働いている利用者さんたちと地域の方たちがお話しをして触れ合えるような、地域のプラットフォームにできたらとも思っています。
出来上がったドライベジタブルは今後、『ひばり食堂』での提供やオンライン販売など、いろいろな利用法を検討中です。
フードロスを減らしたい企業側とそれを必要としている方を知っている私たち、それぞれが得意分野を持ち出して、いろいろなアイデアを実現していけると良いなと思っています。
そしてそのサイクルの中で、利用者さんたちがどの部分を自分の仕事としていけるかを考えることも私たちにとって大切なことです。
企業・私たち・利用者さんのそれぞれが歯車として連動し合い1つのものを作っていくという活動を通して、地域への貢献もしていきたいと思っています。
使用済みランドセルのリサイクル販売
6年間使用したランドセルを、必要な方たちに廉価で販売する活動も動き出しています。
利用者さんたちが汚れを落とし綺麗にしたランドセルは、『ひばり食堂』を利用して販売できたらと思っています。
■取材後記■
オープンまでかなりのご苦労があったとのことでしたが、そんなことも吹き飛ばすくらいの明るくパワー溢れるお二人でした。
社会の為に必要とされることにとことん関わっていこうとする姿勢はとても素晴らしいと思いました。
食品ロスを減らす取り組みのひとつ「コミュニティフリッジ」はぜひ多くの方に知っていただきたいです!!(ゆきだるま)
浜薗さん、中江さん、お忙しいなか、取材にご協力いただきありがとうございました。
障害をもつ方に寄り添って常に家族目線を持って接するお二人の姿に感銘を受けました。
制度にのれない人のセーフティーネットになる場づくり、世の中を良くしていきたいといった想いが
少しでも広げられるよう、私も少しでもお力になれればよいなと思ったひと時でした。(がぶー)
一見かわいらしいカフェのようですが、その内部にはたくさんの素敵な「ウラの顔」がありました。
インタビューをするまでは知らなかった社会のしくみや、いろいろな立場の方たちの思いを垣間見ることができた取材でした。
何事もそうですが、当事者にならなくては分からない、思いを馳せることのできない部分があります。
『ひばり食堂』では、いろいろな角度から優しい社会のあり方を知ることができるように思えました。(fika)
(2023年1月 byクワイエメンバー ゆきだるま・がぶー・fika)
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