つなぐば家守舎の 松村さん(左)と小嶋さん |
“ほぼ越谷”という立地の、草加市八幡町にある『シェアアトリエつなぐば』。
(↑「ほぼ越谷」というところが、越谷市民には嬉しいポイント!)
レトロな雰囲気漂うアパート1棟が、まるごとアトリエになっています。
1階にはカフェスペースとクラスルーム、2階には、木のおもちゃを扱う『tonton'stoy』(※クワイエの取材記事はこちら)、美容室『コルジャヘアーspa&nail』や建築事務所『co-designstudio』が入っています。
公園を囲む静かな住宅街に調和をしつつも、温かく個性的なたたずまいに、クワイエメンバーはドキドキが止まりませんでした♪
今回は、この『つなぐば』を運営する、【つなぐば家守舎】松村美乃里さん(小1・女の子のママ)にお話をうかがいました。
◆写真がいっぱい! 「シェアアトリエつなぐば」「アトリエカフェつなぐば」 アルバム記事はこちら ◆「tonton'stoy~ちいさな木のおへや~」の記事はこちら |
『つなぐば』を運営しているのはどんな方たちですか?
『つなぐば』を一本の木に例えると、運営している家守舎が【根】になります。
ですが、それだけではなく、
- 【幹】となる常時利用の「パートナー」
- 【枝】となる定期利用の「セミパートナー」
の活動があって、一本の木が成り立っていると考えています。
パートナー【幹】 月極で常時利用 |
『つなぐば』の思いに共感した上で、さらに“自分のほしい暮らしを私たちで作っていく(DIO)”ことを体現できる人です。月1回のミーティングに参加し運営に携わり、ここを一緒に作りたいと思ってくださる方たちです。 |
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セミパートナー【枝】 月1回以上の定期利用 |
「パートナー」のようにDIOを体現はできなくても、この場所を理解してくれている方たちです。それぞれのワークショップなどが終わった後でも、利用者がお互いに繋がりを持てる関係を大事にしています。 |
サポーター【葉】 単発利用 |
単発で利用をされる方たちです。 |
『つなぐば』への関わり方はまちまちでも、無理なく等身大でここに関わってもらえるようなより良いしくみを、試行錯誤をしながら作っています。
『つなぐば』はどんな考えのもと運営されていますか?
『つなぐば』には6つの「行動指針」があり、私たちの思いに共感していただいた方と一緒に運営をしています。
【行動指針1】無理のない等身大の暮らしができる環境をつくる
私たちの企業理念は、「ほしい暮らしは私たちでつくる」=DIO(DoItOurselves)というものです。
ただ、「子連れで働ける場所を」というところが『つなぐば』のスタートなので、無理をして働いては続けられなくなります。
ですから、できるだけ自分たちが苦しくない、続けられる等身大の暮らしを目指して、自分たちの手で新しいことを作っていこうという考えを持って活動をしています。
【行動指針2】お互いに尊重し、個性を活かして、自己表現ができる
利用者さんたちの個性やそれぞれの良いところを見せながらも、お互いを尊重していく「シェアする場所である」ということをお伝えしています。
【行動指針3】それぞれの価値が共感を生み、枝葉のように拡がっていく
3年目にしてやっと、ここで活動している方々のつながりや広がりを実感しています。
それと共に、私たちの思いも一緒に広げていきたいと思っています。
【行動指針4】女性が輝くことで、家族も周囲も楽しく生活できる
「子連れで働ける場所を作りたい」というところが『つなぐば』のスタートだったので、どうしても女性中心の活動のように見えてしまいますが、女性だけが活躍しても、なかなか地域全体の活性化にはつながりません。
家族もみんなも幸せであることが重要で、『つなぐば』を女性だけの場ではなく、共感していただけるあらゆる方たちが一緒に楽しく生活ができる場所にしたいと思っています。
【行動指針5】多世代がつながり暮らしやすいまちを目指す
『つなぐば家守舎』は街づくり会社ですから、このシェアアトリエをスタートとして、ここからどんどん、まちの活性化に向けて広がっていきたいと思っています。
【行動指針6】地域の資源を活かす
ご覧の通り『つなぐば』の内装には、古民家の解体などで出た様々なものが使われています。
身近な場所で出る資源を、少しでも多くの場所に活かしていきたいと思っています。
コロナ禍では、どのように皆さんと打ち合わせなどをされていますか?
月1回のミーティングは、当初はオンラインで行っていましたが、「むしろこんな時だからこそ直接話がしたい」という方が増え、現在は感染症対策に注意を払いながら、対面での話し合いを行っています。
ミーティングは『つなぐば』を一緒に作っていく場として捉えられているので、任意参加の方でも出席率は高く、皆さん積極的に発言をしてくださいます。
コロナ渦での活動の工夫や、今後取組みたいことは何ですか?
現在はイベントの規模を縮小した『つなぐ八市(つなぐばいち)』を月1回行っています。
出かけるのが難しい状況が続いていますので、こういったちょっとした催しでも、「気分転換にもなりいろいろな人の顔も見られる」と、皆さん喜んでくださいます。
万一を考えて、しばらくはこのような小さな規模で行っていく形になりますが、今後は隣にある公園を活用して、密にならずに楽しんでいただける企画も行いたいと思っています。
イベントのアイデアはどこから生まれますか?
利用者さんからアイデアをいただくことは多いですね。
例えばオープン当初、この場所をもっと知ってもらおうという利用者さんの発案で、夏祭りのように誰でも気軽に来てもらえる『夏の夜のつなぐBar』というイベントを開催しました。
他にも映画の自主上映を行ったり、カフェのお菓子係さん3人が考えた、『スイーツデー』というイベントを行ったこともあります。
基本的に利用者さんからのアイデアはやる方向で考えて、「じゃあどういうふうにやっていこうか」と話し合っていくことが多いです。
ここでは利用者さんが自分のできる範囲で小さく企画ができますので、そういった部分は、コロナ禍の今の流れと合ってきているのではないかなと思っています。
これからの計画や、こんな場所にしたいという目標を教えてください
試行錯誤している計画は多いです(笑)。
すぐには難しいのですが、隣のアパートが『つなぐば』と同じ大家さんの物件なので、将来的にはそちらも合わせて、いろいろ新しいことをやっていけるといいなと思っています。
また、ここは子育て世代の方が多いので、地域とつながることのできる、いろいろな「点」を打っていけるといいなと思っています。
『わたしたちの月3万円ビジネス』を受講し、ビジネスを立ち上げようと思った理由を教えてください
『わたしたちの月3万円ビジネス(=3ビズ)』とは… 草加市が5年前から主催している、女性創業スタートアップ事業。 社会にいいこと、自分が本当にやりたいことを活かし、「就職」でも「起業」でも「副業」でもない、月に3万円しか稼がない小さなビジネスをたくさん持つ「複業」スタイルを提唱しています。 ◆わたしたちの月3万円ビジネス ◆わたしたちの月3万円ビジネスin草加(3ビズ草加) |
私はもともと、フリーランスでデザインの仕事をしていて、一人で黙々と作業をすることが多く、地域との繋がりはほとんどありませんでした。
娘が生まれた時も、私は生まれ故郷の静岡が好き過ぎて、実は草加のことを全然好きじゃなくて(笑)。
でも、私が静岡を好きなように、子どもにも生まれた場所をちゃんと愛してほしいと思った時に、「自分ができるデザインの仕事を小さく始めてみよう」「それが街づくりにつながれば、きっと子どももここで楽しく過ごせるのではないか」と思ったのが3ビズ参加へのきっかけになります。
私自身、サラリーマンの父と専業主婦の母という家庭で育ったので、自営業の人や、自分の好きなことを仕事にしている大人が身近にいませんでした。
でも今、好きなことをして、笑顔でいる自分の姿を見せることで、また違った考えを持った子どもたちが育っていくんじゃないかと感じています。
『つなぐば』を通しての私の目標は、ここに携わった子どもたちが私たちの思いを継いで、同じような思いを持って次の世代に育っていってほしいということです。
草加を離れても、またここに戻りたいと思ってくれたら嬉しいですし、ここで体験したことを活かして、自分の居場所を作れるような人に育ってほしいなと思っています。
仕事場に娘さんがいることもあるそうですが、どんな影響がありましたか?
娘はここへ来て、学校や年齢が違うお友達と一緒に遊べるのが楽しいようです。
ただ昨年一斉休校になった際には、みんなで2階でゲームをしているという状況が続いてしまいました。
それを受け、小中学生の子どもたちにも、ここを居場所と思ってもらえるしくみとして、『つなぐば子ども会』を作ろうと、現在奔走しているところです。
家庭と仕事の両立はどうされていますか?
松村さんデザインの フリーペーパーの数々 |
両立は…できてないです(笑)。
不器用なほうなので、一つに集中すると他のほうまで手が回らなくなってしまって…。
子育てに関しては、子どもをここに連れて来ればいろいろな大人が関わってくださるので、「子育ては一人でするものじゃない」というのを実感しながら、その方たちの力を借りてなんとかやれているような感じです。
私の仕事であるデザインに関しては、『つなぐば』の立ち上げで両立が難しくなったため、現在は個人的な仕事は一旦ストップし、こちらの運営に集中しています。
デザインの仕事を受ける際には『つなぐば家守舎』の仕事として行っており、地域につながるデザインの仕事をしていくことで、自分のできることを地域に還元していけたらと思っています。
子育て中のパパやママに一言お願いします!
肩の力を抜いて自分が楽しく生きていく姿勢を見せることが、子どもにとって一番いいのかなと思います。
私たちの親世代は「子どものために」が多かった時代ですが、今の私たちはやりたいことができる、幸せな世代かもしれません。
自分が目を向ければ、理解してくれる人、助けてくれる人はたくさんいます。
一人でがんばらず、悩んだらいつでも『つなぐば』へ気分転換に来てくださいね。
スタッフともたくさんおしゃべりをして、気持ちを軽くして帰っていただけると嬉しいです。
■シェアアトリエつなぐば■ |
【取材後記】
リノベーションされた建物は地域で使われていたたくさんの資材が利用されていてビックリしました。
聞くと○○さんのお宅の机とか!○○さんのお宅の階段とか!心地よい空間におさまっている資材達は、とても幸せそうでした。今日も温かくお客様をお迎えしているでしょうね【ゆきだるま】
リノベーションまちづくりの事業に参加した方々でで誕生した「シェアアトリエ」ってどんなところだろうと、素朴な関心がありました。
案内された建物に足を踏み入れたとたん、懐かしく創造的な設えにびっくり!
リノベーションというコンセプトが最大限に生かされ、生き生きとした空間を作っていました。
カフェのランチもとても美味!「行動指針」があって、その思いを共感した方々と仕事をしているという事が感じられました。【やまぴー】
松村さん、小嶋さんを始め関わっている方々が、とても丁寧に『つなぐば』で暮らしているような印象を受けました。
古民家などからレスキューしてきた資材や古道具は大切にリノベーションされていて、お洒落な現代の長屋のようでした。
可能性に満ち溢れている『つなぐば』の活動が地域に広がって行くのを楽しみにしています。【ミサペイ】
お店に着くと、公園からウクレレのメロディーが。取材時間までテラスで一時を過ごしたのですが、なんだか映画のワンシーンのようでした。店内に入ると、また違った雰囲気!目にするすべてのものに『想い』がつまっていて、感動しました。農家を解体する際に引き取った大きな階段、家族で使っていたダイニングテーブル、みんなに愛されていた喫茶店のソファ…それぞれストーリーを持っているけれど、この空間に収まり、一個の雰囲気を作り出していて素敵でした。
ここを作る人の想いがカタチになっていて、お料理、ドリンク、お話を伺い、とっても良い刺激を受けました。【were】
「ご近所にできた、おしゃれなカフェ」と思い取材に訪れた私の考えは、バッサリと裏切られることに!
松村さんのお話を伺い、『つなぐば』はただのカフェではなく、女性の働きやすさや多世代間のつながり、未来を見据えた地域そのものの活性化を考えて作られている「拠点」なんだと感じました。
ここを通じてつながる人が増えていけば、少しずつ何かが変わっていくかも…という、明るい展望を感じることができる場所でした。【fika】
(2021年6月byクワイエメンバーゆきだるま、やまぴー、ミサペイ、were、fika)