私が小さい頃の話です。
親は共働きでした。お父さんは築地のお魚屋さん、お母さんはレストランのコックさん、お姉ちゃんは7つ上、お兄ちゃんは4つ上。
子どもだけで過ごす時間もありましたが、上の2人は部活や習い事があり私は近所のアーちゃんの家で過ごすことが多かった。
アーちゃんは推定70歳。ご主人と孫の3人暮らし。
孫は私の一つ下でよく遊んでいた。
親と離れ祖父母に厳しく育てられていて、年下だけど逞しかった。
土曜日は半日授業で学校から帰ると、まず「独占!女の60分」を見てからアーちゃんの家へ行き、お昼ご飯を食べる。
アーちゃんは漬物を漬ける名人で、近所のおばちゃん達はよく庭先にゴザを敷いてお茶会をしながらアーちゃんの漬物を美味しいと言いながら食べていたくらいのソウルフードだった。
そんな訳でアーちゃんの家では必ず食卓に漬物が上がった。
それとバナナの天ぷらが出された思い出がある。
天ぷらといえば海老やイカ、茄子などで作るものだと思い込んでいた。
白いご飯と白菜漬けとバナナの天ぷら。
低学年の私には正直きつい。
なんなら漬物だけでご飯が進むようになったのは五十路を過ぎた今。やっと。
しかし何でバナナを天ぷらにしたのだろう?
なるほどザ・ワールドで異国文化を知り、試してみたくなったのだろうか?
そしたらそんなエピソードトークがあっても良さそうなのに何の説明もない。
孫は疑う様子もなく無言で食べていた。
ますます困惑する私。
山田さん(ここにも良く預けられていた。単身赴任のご主人に4人お子さんがいる肝っ玉母ちゃん的おばちゃん。大好きだった。)の家ではのりたまが出てテンション爆上がりなのに、アーちゃんの献立は出されたものは残さず食べなさいの時代にハードルが高すぎた。
今思えば、世界レベルで考えたらバナナの天ぷらも含めてバナナ料理はポピュラーな献立ではある。主食にしている国だってあるくらいだ。
当時の私がそれを知っていたらご飯は進まなくても何となく納得はできたかも知れない。そうなんだぁ、って。
私は幼少の頃から人様のご家庭の食文化に触れ、近所の方々にも育てられた。
みんなお節介なおばちゃんだった。
そんな生い立ちは大人になった今、こども食堂の運営や調理師としての仕事などに活かされている気がする。
固定概念にとらわれないアーちゃんのバナナの天ぷらが与えてくれた影響は私の中にちゃんと残っている。
(2024年11月 byクワイエメンバー ミサペイ)