「まちづくりには、担い手の育成と後押しが重要。みんなが一人前になって、地域を引っ張っていってくれてこそ、本当のまちづくりです」と代表の井橋さん。生まれ育ち、今もなお暮らす越谷市で、常にまちと人のためを考えた結果、2018年に会社を立ち上げました。
「私たちがやっていることは全て繋がっている」まちづくりに真正面から取り組んでいる現在についてお聞きしました。
代表 井橋 潤 さん
越谷新町商店会の会長を務めている中、商店会は高齢化や跡継ぎ問題、商売が活性化しないなどの課題があり、根本的に商店会の今後を考える必要がありました。そこで、まちおこしを通じて課題を解決できるのではないかと考えたことが発端です。
私はここで生まれ育ち、商売もしていますので、なんとかしてまちを元気にして、まちおこしのお手伝いをしたいという気持ちも立ち上げのきっかけとなりました。
国や県などの補助金を受けながら積極的に活動するために、商店会という任意団体ではなく、本気の意思表示として、まちづくりの組織となる会社の設立を決めました。
事業の柱は大きく分けて3つあります。
カフェ事業は、旧日光街道沿いにあるCAFE803をカフェスタッフとともに運営しています。
おいしいコーヒーと手作りパンを提供しているほか、さまざまなワークショップを開催する場所として、スペースを提供しています。
また、市内の情報受発信の場でもあり、暮らしを楽しむための情報や、イベントのお知らせなどを紹介しています。
レンタルオフィス事業は、OFFICE801とOFFICE803の2ヶ所を運営しています。
新築の建物に個室が完備されたOFFICE801と、旧日光街道沿いにある空き店舗をリノベーションしたOFFICE803をそれぞれの目的や広さに応じて、企業や個人に利用いただいています。
人材育成事業は、簡単に言うと、“まちの担い手を育てる事業”です。
例えば、「コアキナイ塾」というセミナーの開講をはじめ、マルシェやイベントの開催など、商売の経験がない方へ体験や経験の場を提供し、起業や副業に関する支援をしています。
「越谷技博(こしがやわざはく)」を2020年より毎年開催しています。
越谷市は代表的な観光名所はありませんが、ひな人形、甲冑、だるま、桐だんす、せんべいなどの職人が多く、その職人や伝統工芸こそが越谷らしい観光資源になるのではないかと思い、一般社団法人越谷市観光協会とタイアップして生まれた“ものづくりの体験交流イベント”です。手仕事や特技を活かした講座を実施できるため、起業やステップアップを考えている方の後押しをする手段の一つになっています。
仮に個人でイベントやワークショップをやりたいと言っても、宣伝するには大変な労力と宣伝費がかかりますよね。そこで、講師である「技人(わざびと)」として参加いただくことで、イベントのパンフレットやウェブページを共同で作成でき、より多くの方へ自身の技をPRすることができます。
また、技人から伝統工芸やアートなどを学ぶことで、受講者の「学人(まなびと)」にとって地域の魅力に気づくきっかけづくりを目指しています。
まちづくりはひとづくり。人と人との繋がりが、まちの未来を生むと思っています。
“融合できるまち”です。
人、まち、産業が上手く融合し、他の市ではないような特色が生まれています。越谷レイクタウンのような商業地がある一方、山車を曳くお祭りなど後世に伝えなくてはならない歴史ある伝統も残っています。
引っ越してきた方がこのまちの良さを認識して愛し、私たちに気付かせてくれる。これも融合の一つですね。
スタッフ 秡川 たえ さん 原田 雅章 さん
スタッフは、秡川さん、原田さん、小林美加さんの3名です。代表して、秡川さん、原田さんにお話しを伺いました。
秡川さん:私は地元の出身で、井橋代表とは長い付き合いです。人との関係を大切にする、まちのことを考える、誰かのために何かできることはないかと考えている時に「越谷商工会議所で開催しているチャレンジ講座というセミナーに参加しては」と誘われたことがきっかけでした。
その講座の卒業生がまちづくり越谷に関わっていることが多く、そこで知り合った方に声をかけてもらい、最初はシェアオフィスのお手伝いから始めました。
原田さん:私は、越谷に住んで15、6年になります。この会社に入社して1年半くらいですが、それまでは全然違う仕事をしていて、朝出て行って、夜帰ってきて、地域のことを何も知らない…という日々でした。もっと関わってみたいと思っていたところ、知人の紹介で巡り合いました。
原田さん:シェアオフィスの管理とイベントの企画運営をしています。
今年は半年くらいかけて「越谷技博」の準備に携わり、多くの技人希望者と会って、講座内容を熟考しました。イベントの開催中は問い合わせの対応などを主に担当しています。常に、“住む人、来る人、働く人のために動く”をテーマに業務を行っています。
秡川さん:例えば、創業100年になるおせんべい屋さんのせんべい焼き体験や、甲冑などを製作されている会社が本業で使用している鎧の一部分「栴檀(せんだん)」を使ったキーホルダー作り体験で参加者に技を伝授するなど、自身の持つ技を提供していただいています。越谷技博は各地にある温博(温泉博覧会)をモデルにしており、越谷は観光の名所が少ないため、“人”に注目し、そのコンセプトに賛同してくださった方に参加いただいています。
受講いただく方(学人)にとっては、普段は見ること、体験することができない貴重な体験ができる、楽しいイベントです。
原田さん:塾の受講生17名が集まってマルシェを運営するゼミとリノベーションのゼミを立ち上げ、成果発表として実践イベントの「越ヶ谷まちあそび」を開催しました。
具体的には、旧日光街道を車両通行止めにして、ライブステージを造ったり、マルシェやさまざまな体験イベントを開催したり、商店会の方々の協力も得ながら大盛況に終わりました。
秡川さん:すごく気の長い子育てです。人と人が関わってどうやって生活するかが、イコールまちづくりだと考えます。
原田さん:帰ってきたくなるまちをつくる、それがまちづくりだと思います。
井橋さん
「職人のまち、技人のまち」
秡川さん
「山も海もないけれど何でもある、住みやすいまち」
原田さん
「田舎だけど都会、都会だけど田舎、地元で完結できるまち」
インタビューを通して、まちづくりの成功には時間がかかり、根気がいることだと認識しました。代表の井橋さんは、越谷を愛し、生まれ育ったまちを活性化させるために何をしたら良いかを常に考えていて、お話からも熱意が伝わってきました。
融合の仕掛けを考え、さまざまな取り組みでまちを豊かにする。株式会社まちづくり越谷は、人の成長と人の繋がりを見守っています。