2015年3月5日、児童館コスモスで、
講座「ゆる育児~がんばりすぎない子育て~」が行われました。
妊娠中から2歳未満のお子さんを持つ参加者約20組が、「私の子育ての長期的目標」をグループワークで話し合いました(記事はこちら)。
でも、まだまだ「ゆる育児」について聞きたいことがたくさん!
皆さまの代わりにクワイエメンバーが、講師の落合香代子さんへ、いろいろな質問を伺ってきました~
Q 落合さんご自身が「ゆる育児」を始められたきっかけは何ですか。
地域の中で、暴力を受けているお子さんとその親御さんに出会ったことがきっかけです。
地域の中で困難を抱えている親子がいること、地域の中で見守ることはできないのかと考えはじめたことが始まりです。
そして、自分の子育ての中でのイライラ観、焦燥感など、子どもに対して抱えるやり場のない思いを自らも体験し、地域の中で子どもを見守り育む、子どもと親のゆるやかな成長とゆるやかな子育てを楽しむにはどうしたらいいのか、ということを考えるようになったこともきっかけになっています。
Q 「ゆる育児」を続けていく上でのポイントはありますか?
無理をしないことですね。
「子どものためにどうしたらいいか」だけではなく、「自分のために、どうしたら居心地がいいか」という、自分がゆるやかに過ごせるようにという感覚を大切にしてほしいと思います。
「ゆる育児」の「ゆるい」が理想になってしまって、「ああ~、私全然ゆるくなってない」とがんじがらめになっては本末転倒、「ゆる」は自分に対しての「ゆる」でもあるわけです。
時々、「ゆる育児」が子どもに対する放任と誤解されることもあるのですが、そうではなく、子育ての「ねばならない」という部分をゆるめて、子どもの成長も親の成長もゆるやかに認めよう、ゆるやかに子育てを楽しもう、そしてゆるやかに周りの人とつながろうというのが「ゆる育児」です。
Q スウェーデンでの子育ての様子について教えてください。
スウェーデンをはじめとした北欧諸国は、個人を尊重する考え方、人権教育を大切にしている国として知られています。
子どもに対しても、親が「こうしたらいいのに」ではなく、子どもがどうしたいか、それに親がどう付き合うか、という考えです。
でもその時に親が我慢できないことであれば、我慢する必要はなく、親のやりたいことと、どうすり合わせるかを考えます。
スウェーデン人の30代と40代の友人がいますが、その方たちは、大人から叩かれたり怒鳴られたりしたことが一度もなく、またスウェーデンで、そういうことをしている人たちを見たこともないそうです。
昨年知り合った20歳のスウェーデン人の女性は、初めて子どもが叩かれているのを見たのが、日本のスーパーだそうです。
そして彼女は、子どもが叩かれているのにも驚いたけれど、周りの人が誰もその親を注意しないのが、一番驚いたと言っていました。
Q スウェーデンで児童虐待防止法が成立されるまでの流れを教えてください。
スウェーデン国内では、1930年代頃から子どもへの暴力に反対する市民活動があり、1979年の法律の成立の頃にはすでに、そのベースはできていました。
しかしそれでも、法律ができる際には「しつけで叩いてはいけないとなると、どうしたら良いのか」と、90%以上の国民が反対をしました。
ですが、対話を重ねることで法律ができあがり、30年経った今、「しつけの上で叩くことが必要だ」と思う人は10%以下になりました。
社会全体で、「子どもに対して暴力は振るわない」という考えが非常に強いです。
ただ、スウェーデンも完璧なわけではなく、そのような育児環境ゆえに、カーリング・ペアレント(カーリング競技のように、子どもの前に道を作って困難を少なくする親)と呼ばれる、自分の子育てをどうしたら良いか迷っている親がいるという話も聞いています。
Q 言い聞かせのきかない年齢の子どもへはどうしたら良いですか。
やはり繰り返し伝えていくことです。
今日の講座ではできませんでしたが、この後のワークで、「攻撃的な上司の下で新たに働くことになった」というワークをするのですが、それは、「自分が辱められたり追い詰められたりするとどんな気持ちになるか」を体験して頂くワークなのです。
そのワークをするとたいていの人たちは、「口で言って分からないから、叩いてしつける」というのは、
やはり不要なのかもしれない、と気がつくと思います。
実際私も、言うことを聞かない子どもに手が出そうになったりつらい時期がありましたが、1年半ほどで、完全に手が出るということはなくなりました。
言葉が通じない時期は繰り返し伝えていくしかないですが、親が繰り返し一生懸命伝えている姿を見て、子どももそこから何かを感じ取っていくと思います。
また、そういった発達段階時期にあるお子さんへは、外に出たり、風にあたったりすることで気持ちを切り替えさせるといった、違うやり方も考えることも必要ですね。
Q 思わず怒鳴ったり叩いたりしてしまいそうになった時に、何かいい方法はありますか。
人間が本当に怒りでつらい時間と言うのは、実は6秒間だそうです。
ですから、その6秒を我慢すれば、怒りのピークは過ぎ去ると聞きました。
そして一度叩かずに済んだことが自分の成功体験となって、自信と喜びが出てくると思います。
何があっても「叩くことはやめる」と決めることが大切です。
大丈夫です、きっとやめられるようになります。
もし、あとから反省するくらい怒ってしまって「失敗した!」と思っても、子どもが何歳であっても子どもに謝る姿勢を見せることが大切だと思います。
子どもに親が失敗した姿を見せることも良いことだと思っています。
それは子どもへの「誰でも失敗するんだ、失敗してもまたやり直せば良いんだ」というメッセージになると思います。
そして、「親も失敗しているけれど、でもやっぱり人に対して叩いたり怒鳴ったりしてはいけないんだ」という考え方が、子どもの中にしみ込んでいくことになると思います。
私がこのポジティブ・ディシプリンに出会ったときには、「ああ、やっぱり叩かなくていい子育てってあるんだ!」、「叩かずに子育てをしている人っているんだ!」ととても衝撃を受けました。
それと同時に、スウェーデンだからできているのではなく、同じ人間なのだから、自分にもできるに違いない!と思いました。
「叩かなくてもいい子育てがある」ということさえ分かれば、最初はチャレンジが必要ですが、必ずできる!とも思いました。
Q ポジティブ・ディシプリンは、DVの抑制にも役立つのでしょうか。
親が叩く・怒鳴るというのは、子どもへ、「大切に思っている人へは、叩いたり怒鳴ったりしてもいいんだ」という考えを教えてしまっていることになり、それはとても怖いことだと思います。
特に男性で、スポーツの場に多いですが、「あの時先生が、自分たちのことを思って殴ってくれた」という話が良くありますが、それは「殴って」くれたことにではなく、実際は「思って」くれたことに共鳴を感じたわけです。
しかしそういう体験を通して、「ほんとうに伝えたいことがある時は、殴ってわからせても良いんだ」という考えを持ってしまう人もいます。
「叱らないスポーツ教育」を実践している、帝京大学ラグビー部と連携しているキッズラグビークラブの先生は、
子どもが何か間違いをしてしまい教える場合でも、「どうしてこうなったのかな?ちょっと考えておいてね」と言って、終わりにするそうです。
それで最終的に子どもが自分で気がついて、今後同じことをしなければ良いわけで、その時に答えが出なくても、気づきのきっかけを与えることを大切にしているわけですね。
親は何かがあったとき、「どうして?」と追及してしまいがちですが、そうすることによって、追い詰める姿を子どもに見せることになり、子どもはまた誰かを同じように追い詰めていくようになります。
そう考えると、やはり「私の好きな私を見せる」ということがとても大事になりますね。
親が怒っている姿を見せることは、なぜ怒られているのか分からない、ただ「怖い」という思いと、「怒ってもいいんだ」という2つのメッセージを子どもが覚えるだけになります。
落合さんへの質問は、まだまだ続きます。
【Q&A編・その2】も、「ゆる育児」の知りたいお話が盛りだくさんですよ~
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(2015年4月 byクワイエメンバー れいなママ/ゆきだるま/ミサペイ/fika)