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「ゆる育児」~続・がんばりすぎない子育てのススメ!~【Q&A編】

ページ番号1675です。 2022年10月26日

「ゆる育児」~続・がんばりすぎない子育てのススメ!~【講座編】では、11月に児童館コスモスで行われた講座の様子をお伝えしました。
【Q&A編】の今回は、引き続き講師の落合香代子さんに、スウェーデンの現状や、「ゆる育児」の広がりなどについて伺います。

スウェーデンで見てきた、「ニルスの国」の子育て

落合さんは2015年10月に、スウェーデンへ10日間程の視察旅行をされたそうです。
「ニルスの国」の現状や感じたことを聞いてみました。

スウェーデンの子育て支援制度は?

スウェーデンは、「お母さんに優しい国(セーブ・ザ・チルドレン 2015)」第5位(日本は32位)、男女平等指数(世界経済フォーラム ジェンダーギャップ指数 2015)は第4位(日本101位)の国です。
(日本の男女平等指数に関しては、残念ながら世界の中でとても低い数字になっています。)
スウェーデンの子育て支援制度には、以下のようなものがあります。

育児休暇
父親・母親合わせて480日間の育児休暇が取れます。
その内、60日間ずつは、父親・母親のそれぞれが取得します。
父親の育児休暇取得率は90%です。
看護休暇
子どもの具合の悪い時には、12歳まで「看護休暇」が取れます。
働いている両親が取れない場合は、働いている祖父母がその休暇を取り、子どもの看病をすることができます。
就学前学校
1歳になるとすべての子どもたちが「就学前学校」に入ることができます。
(就学前学校は、「保育」とはちがい「教育」という位置付け。
「すべての幼児に質の高い教育を提供すること」を目的にしています。)
スウェーデンの子どもたちはこの「就学前学校」で、知識や経験だけでなく、スウェーデンで大切にされている、「男女平等」や「人権」という考え方を、早期から学んでいくことになります。
ABCプログラム
出産年齢の高齢化や、産後の仕事と育児の両立などのストレスが原因となり、スウェーデンでも次第に「子育ての仕方がわからない」と考える親が増えつつあったことを踏まえて、2012年にスタートした、親を対象とした「子育てを学ぶ」のためのプログラムです。
ストックホルム市内で提供される一つのプログラムとなっていて、さらに必要な場合は、よりハイリスクな親向けのプログラムや、お子さんの側に課題のある親向けのプログラムを受けることができます。
日常の目につく場所に、さりげなくプログラム内の挿絵が掲げられ、誰もがABCに馴染みやすいように、広報が行き届いています。

スウェーデンでは、「子どもは社会の宝である」という考えが浸透しています。
そのため、その子どものそばにいる親が余裕を持って、子育てに参加することができる環境を整えています。

根強い「非暴力」の文化

公園にて スウェーデンでは、10名程の方々からお話を伺いました。
 とても考えさせられたのが、「子どもに対して『叩くこと』、『激しく叱ること』は、子育てに必要ない」という考え方が浸透していることでした。
 それぞれの方がおっしゃっていたのが、感情を人にぶつけて怒鳴り散らしたりする人を、それまでの自分の生活の中で見たことがないし、自分がそうされたこともないので、どんなに自分がイライラしても、子どもに対してそれをぶつけようと思う発想がないのだそうです。
 スウェーデンでは、すでに1200年代に体罰や暴力を禁止する法律があり、「個人」や「人権」、つまり子どもであっても人として尊重する、という考え方を大切にする思想が深く根付いていました。
他人や弱い人に対して暴力をふるうことが、「ありえないこと」、「とても恥ずかしいこと」という認識も強いようです。
一方日本の社会では、「男性は強い力を持つことが必要だ」と捉えられているところがあったり、女性の側も「女性らしさ」を追求する部分などがありますね。
「人権」「個人」を尊重するという考え方は、「男女平等」「子どもの人権」にも当てはまりますし、どちらの考え方も北欧では大切にされています。

「多様性」を認める社会

スウェーデンは同性婚を認めている国です。
また移民も多く、国民の6人に1人が移民という構成になっています。
男女平等も根付いており、そういった「多様性」を認め合う社会になっています。
「多様性を認める」というと教育的で難しいイメージがありますが、スウェーデンではそのような感じはなく、ごく自然に子どもたちが読む絵本の一つとして、多様性を描いたものがたくさん置かれています。
例えば、オスの2頭のキリンが赤ちゃんを探しに行き、最後は見た目も全然異なるワニの赤ちゃんを養子に迎える話や、2人のママと女の子の3人家族に、一人のママが出産して4人家族になる話、サッカーとワンピースを着るのが好きな男の子の話、男女どちらでもない名前の子が主人公の話など、多様性を「教える」ということを目的としたのではない、ごく普通の「読み物」としての絵本がたくさんあります。
そのように、日常的に、当たり前に「多様性」に触れることが、「自分はありのままでいいんだ」と思う、自分を信じて生きる力に繋がっていることを感じました。

「子どもの声をきく」ことの大切さ

スウェーデンをはじめとするヨーロッパでは、「子どもの権利」が大変重視され、「子どもの声をきく」ということが、社会の中に浸透しています。
「子どもが何を考え、何を感じているのか。
まずは子どもにきいてみよう。子どもの意見も受け止めよう」という考え方です。
つまり、大人は子どもに注意をしたり、導く責任がありますが、子どもはその時、大人に対して自分の意見を言ってもいいし、大人は子どもの意見をきく責任もある、ということです。
そういった自分の意見を自由に言い、周りの大人にきいてもらえた、受け止めてもらえたという経験の積み重ねは、「自分の意見をきちんと言えること」につながります。
つまりそれが、生きる力が育まれ、社会に出た時に自分の足で立っていける大人になることなのではないかと思います。
今回の旅で出会った一人の女性、エメリーさんについてお話ししましょう。

 エメリーさんは、小学校1年生の時に「識字障害」と診断されました。
 そのため小学校へ入った後に、先生から「エメリーは馬鹿」、「全然勉強ができない」といつも言われていたそうです。
 私は、そんな状況でどうして学校を休みたくならなかったのか聞いたところ、エメリーさんは、「先生が言っていることの方が間違いだと思っていたから、学校へ行きたくないとは思いませんでした」と答えてくれました。
 なぜそんなに客観的に考えられるのか不思議に思い、再び聞いてみると、しばらく考えた後、「子どもの頃から、どんなに小さなことでも、私が良いことをすると父母が毎日たくさん褒めてくれました。
 間違ったことをすれば、『私はこう思うな、エメリーはそれでいいのかな』と注意をしてくれました。
 そして何よりも、自分が今何を考えて何を思っているのか、いつも聞いてくれていました」と答えてくれました。
 「先生は、私のいいところも悪いところも何も見てくれていないし、私が何を感じているのかということも聞かずに、ひどい事を言っていました。
 ですから、この先生が間違っているのであって、私は悪くないと思っていました」ということでした。


お花とお話し 「子どもの声をきく」というと、ともすると、子どもの言うなりにならなくてはいけないのかと誤解されますが、そうではなく、今何を思ってこういうことをしたのかという、つまり子どもの世界を覗かせてもらおうということです。
 子どもは何かをするとき必ず理由を持っているので、その思いをきくことはとても大切です。
 「子どもの声をきく」ということは、ただ子どもに話しかけてきくだけではなく、子どもの様子を見たり感じたり、子どもが何を考えているのかを想像したりして、そこで自分は一体何ができるのか、どうアプローチしていったらいいのかを考えていくことだと思っています。

 

スウェーデン流・ストレスとの付き合い方

スウェーデンの方たちにも、もちろんストレスはあります(笑)。
スウェーデンで気がついたことは、あまり皆さんがスマートフォンなどを見ないということです。
電車の中など移動のときも、何もせずにボーっとしている方がたくさんいました。
休日でも、家族と一緒にいるときはスマートフォンなどは極力見ず、「休みは家族のために使う」といった姿勢の親御さんが多かったですね。
スマートフォンやPCを持っていると、どうしても休日にはふさわしくない情報が入ってきますので、そういった雑事からあえて距離を取って、リラックスできる時間を、自分で作り出すように努力している様子が印象的でした。
また、ストレスの発散の仕方が、「怒りの感情を表に出す」というものではないのですね。
「怒り」はとても大切な感情ですが、その出し方が問題になります。
「怒り」を出している大人は、子どもから見るとただ怖いだけで、「怒り」をぶつけるだけの伝え方では、何も伝わらないのです。

 スウェーデンのおばあちゃん流・子育ての知恵
 今回の旅で、私が目からウロコが落ちたおばあちゃんの子育てです。
 きょうだい同士はよくケンカをしますが、そのほとんどは問題にするようなことじゃないそうです。
 おばあちゃんはこう言いました。
 「子どもは気分が変わればまたすぐに仲良くなるし、その仲良くなるために、自分は何ができるかをいつも考えていました。
 それで、子どもがケンカをしたり、しそうになっていたりしたら、私は絵本を読んでいました
 『絵本の時間よ~(^^)』と言って1冊読み終える頃には、またみんな仲良くなって、一緒に遊び始めていました。」
 ケンカが勃発すると、親としては「どう叱ろう」「どう仲裁しよう」と思ってしまいますが、「お母さんが絵本を読んでくれる」という、ちょっとした嬉しいことが介在するだけで、また気分が変わってうまくいくということもあるのだと気付かせてもらいました。

これからの「ゆる育児」の広がり

落合さんに、今後の「ゆる育児」の活動や新たな展開についてうかがいました。

「ゆる育児研究会」の開催

今年1月から、「ゆる育児研究会」を開催しています。
行政の方、専門職の方、市民の方たちで勉強会を行っていて、WEB上での勉強会の動画発信も準備中です。
子育て支援や児童福祉に関わる方々、一般のママなど、色々な方たちを招いて、勉強をしながら繋がりを深めることを目的としています。

「ゆる育児」の課題~虐待の「防止」から「予防」へ

かけっこ今、私が個人で参加している「チャイルドファーストプロジェクト(※)」というのがあります。
小児科医の方が立ち上げたこのプロジェクトは、虐待の「防止」ではなく「予防」を目的とし、動画で虐待予防をPRしています。
「チャイルドファースト」とは、ここまでお話ししてきた北欧の、「子どもの人権」「子どもの声をきく」と同じ意味を持つ言葉です。
「ゆる育児」は、子育て当事者がはじめた「虐待の予防と防止」の取り組みですが、「チャイルドファースト」は、小児科医師とクリエーターの方々がスタートさせた「虐待予防」の取り組みです。
「予防」は、問題を起こす前に防ぐこと。問題を起こさせないようにすること。
「ゆる育児」では、「ゆるやかに子どもの成長を見守って、ゆるやかに地域とつながり、ゆるやかに子育てを楽しみたい、そして親もゆるやかに成長したい」、「虐待のない、親が育児で思い詰めることのない世の中になって欲しい」と願っています。
子育て当事者だからこそ、子育てに悩んでいる人、子育ての中で助けを求めている人に手を差し伸べることができる、と考えて発信していますが、「チャイルドファースト」では、お母さん、お父さんたちに対して、子育てに縁のない人でも何かできることがあるんじゃない?という発想から、虐待予防を広げていこうとしています。
「ゆる育児」や「チャイルドファースト」のような考え方を、いろいろな人たちと連携をとって発信していきたいですね。

(※)チャイルドファーストプロジェクト
 一般社団法人「こどものみかた」理事で小児科医の小橋孝介さんらが中心になって立ち上げたプロジェクト。
 デザイナーなどのクリエーターや子育て支援NPO、法律関係者などが集まり、子どもの安全を何よりも優先させる、子ども中心にしたモノの見方=「チャイルドファースト」という考え方を浸透させることを目的に活動。

 チャイルドファーストプロジェクト(Facebook)
 チャイルドファーストプロジェクトムービー(ショートVer.)
 チャイルドファーストプロジェクトムービー(ロングVer.)

育児真っただ中の親御さんに一言お願いします♪

毎日の育児は、本当に大変です。
「ゆる育児」は、まず自分が「ゆるむ」ことからですから、1日の1%(=15分)だけでも、自分がゆるむことのできる時間や、「自分が好きな自分」になれる時間を持てると良いですね。
また、共感し合える場所を持つというのも、とても大事なことですね。

 

取材後記
3月に引き続き、「ゆる育児」を取材させて頂きました。
今回は講師の落合さんから、スウェーデンの生きた情報を伺うことができ、さらにポジティブ・ディシプリンについての考えを深めることができました。
講座の参加者の方からは「もっと詳しく知りたい」という要望もあり、ぜひ次回はまた次のステップや、別年代のお子さん向けプログラムなどを聞いてみたいと思いました。

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(2016年1月 byクワイエメンバー fika)

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