前回の「学校に行かないと決めた子どもたち【その1】」では、「りんごの木」での過ごし方、勉強・進学について、そして「学校に行かないといけないですか?」の答えのヒントをお伝えしました。
今回は、学校に行かないことについて、保護者へ伝えたいことをお伺いしました。
お話しを伺ったのは、引き続き「越谷らるご」の理事長 鎌倉賢哉さんです。
理事長 鎌倉賢哉さん
学校に行かないと決めた子どもたち【その1】 | 「りんごの木」の設立について、紹介、「りんごの木」での過ごし方、勉強・進学について |
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今回 学校に行かないと決めた子どもたち【その2】 |
学校に行かないことについて、保護者へ伝えたいこと、「越谷らるご」の活動について |
フリースクール『りんごの木』について教えてください
子どもたちに学校へ行かない理由を聞くことはありますか?
見学に来たお子さんに学校に行かなくなった理由を聞くことはしません。ここで過ごしたいかどうか?です。
原因を探って理由が分かってもそれで何か出来るかは分からないですし、いろいろな事が積み重なって学校に行かなくなったと思っているので一つの原因ということではあまりないと思います。
原因を探ることでその子を追い詰めることになってしまうこともあります。
どうして不登校になるんでしょうか?
私たちとしては、どういう思いで学校に行きたくないと言っているのかを考えていきたいです。
真面目に重く受け止めてしまう子はちょっとでも休むと行きづらくなるようです。
どんどん自分を追い込んでしまいます。
親も深刻にとらえる方だと子どももますますプレッシャーがかかります。
結局はなるようにしかならないです。
子どもが学校に行きたい、学校が面白いと思ったら行くだろうしそうじゃないと思ったらいくら親が言っても行きません。
その子の今のありようを応援するしかないと思います。
その時子どもを追い詰めないように、そして親御さんたちも周りから追い詰められないようにして欲しいです。
親御さんが困った時、悩んでいる時は、親の会や誰かに相談するなどしたら良いのではないかと思います。
不登校についてどのように捉えているかお聞かせください。
学校に行かないというのも生き方の一つの選択だと思います。
例えば習い事だったら子どもが行きたくないと言ったらだいたい親はしょうがないなと思って辞められるが、学校は辞められない。でもそれって子どもにとってはきつい状況です。
学校に行かないなら行かないでじゃあどうやって過ごすのかということを考えて、自分に合う場所を見つけて欲しいと思います。
そのことは、その子がどうやって生きていくのかを考えるきっかけであり、むしろチャンスにもなるはずです。
合わない学校にずっと行き続けるよりも合わない学校に自分で行かないと決められるのはすごく子どもにとっては大事な力なのかなと思います。
登校拒否という言葉がありますが、それに対して不登校という言葉は、学校に行かないと言う意思が漠然としていて良くない言葉だと思います。
私は不登校という言葉もあまり使いたくないですし、そういうくくりかたで子どもを見たくないと思っています。
子どもが不登校になったら、保護者はどうすればいいでしょうか?
状況によりますが、基本的には子どもの意思を大事にして欲しいです。もし辛そうで行けなさそうでも本人が行こうとしているなら無理に止めるのもどうかと思うし、子どもがやってみて無理だと本人が決める方が良いと思います。
また、学校に行かないならフリースクールに行きなさいとかではなく、子どもはたぶん学校を休みがちになった時は、いろいろな事を考えて悩んでいるので、親が勝手に道を決めないほうが良いです。
あまり特別なことをしなくて、普通にご飯を作って普通に暮らしているのが一番良いのではないでしょうか。
よほど傷つきながら学校へ行くよりは行かない方が良いような気がします。
親がじたばたしてしまうと子どもはそれを感じてしまうし、なるようにしかならないです。
親の会などに参加して抱え込まないで欲しいです。
親の悩みは?
活動を30年くらいやってきましたが、親御さんの悩みは10年前も20年前も大きく変わらないと思います。
親はご自分が学校で学んで進んでこられた方が多いので学校に行くのが当然だと思われています。
夫婦での話し合いでは、一般論しか言わないお父さんの場合は話がまとまらないことが多いようです。
お子さんは自分のことでお父さんお母さんがケンカしているとより傷ついてしまいます。それでも最近は親の会に参加するお父さんが増えてきています。皆さんフリースクールはイメージ出来ないと思いますので、来所するタイミングが合えばぜひここの様子を見て欲しいと思います。
理事長の鎌倉さんについて教えてください。
以前は他の市の教育委員会の適応指導教室で働いていました。
教育相談員として子どもたちを学校に返す仕事をしていました。
親御さんは自分の子に色々言い過ぎてこういうやり方はいけないなと反省されることがあると思います。
私の場合は他人のお子さんや親御さんにご本人の気持ちを受け入れ切れずに、傷つけてしまったのではないかという思いがあります。
それがきっかけでこういう仕事をやっていこうと決めました。
すべての保護者へ一言お願いします。
学校に行くとか行かないとか関係なく、子どもが笑顔でいられることを一番に考えて欲しいです。
取材の様子
「越谷らるご」のその他の活動について、引き続き鎌倉さんに伺っていきます。
「越谷らるご」の活動についてお聞かせください。
大きくは5つの活動があります。フリースクール「りんごの木」、自立援助ホーム「ゆらい」、20歳以上の人の居場所
「ほっとりんご」、埼玉県ひきこもり相談サポートセンター、親の会・講演会です。
活動をしていくうちに色々繋がってきました。
自立援助ホーム「ゆらい」
以前「りんごの木」を利用していたお子さんのことがきっかけで、そういったお子さんのための生活の場としてホームを
作りました。
法律で規定されている事業で措置費などを公費で頂いています。子ども達は児童相談所経由で受け入れています。
定員が6名で中学校卒業後から20歳まで利用出来ます。
生活しながら自分でお金を貯めて20歳以降一人で生活して行くことになります。
365日24時間体制で4名のスタッフが交替で活動しています。
20歳以上の人の居場所「ほっとりんご」
20歳以上が対象で月2回毎回5~6人 多くて7~8人利用されます。
仕事をされていない方もいらっしゃるので会費は1回300円としています。
活動は「りんごの木」が使っていない時間、夕方5時30分から行っています。
こちらの参加を足がかりに何かやってみようかなという気持ちになってくれれば良いなと思います。
埼玉県ひきこもり相談サポートセンター
厚生労働省の管轄で埼玉県の委託で行っているので相談料は掛かりません。
電話でも来ていただいても大丈夫です。
6歳以上を対象としています。
親だけでも大丈夫ですし、最近は親が亡くなった後のことを心配される、ひきこもっている方の兄弟姉妹の方からの相談が増えています。
20代~30代当事者の相談が一番多いです。
埼玉県内(さいたま市をのぞく)のひきこもり相談の第一窓口として行っています。
親の会
学齢期と20歳以上のお子さんをお持ちの親御さんの会の二つに分かれてお話しします。
第一日曜日の午後に毎回20~30名ほどが参加しています。
お話しすることでアドバイスをもらうよりも自分達の悩みを話して気が楽になってもらいたいと思っています。
「越谷らるご」を利用していなくても参加できます。
参加がきっかけで「ほっとりんご」やフリースクール「りんごの木」の利用や相談に繋がることもあります。
埼玉県ひきこもり相談サポートセンター 大部屋
特定非営利活動法人越谷らるご |
編集後記
越谷に「りんごの木」というフリースクールが誕生したという話を聞いた時から、25,6年経っているんですね。今回お話を伺うことができて、再認識しました。
困難な状況にある子ども達から20代過ぎた方々に、寄り添う活動が密に展開されている事に感心しました。大人の側から「ねばならない」という視点からの投げかけでなく、「一人一人のありのままの姿」を受け入れ、そこから「子どもが自らの意志で決定する」のを見守っていることを強く感じました。
それは部屋の家具や生活用具のセッティングなどにも現れていると思います。
又、見守る大人の忍耐力、愛情が深いのではないかとも思いました。
長い時間、お話を聞かせて頂きましてありがとうございました。(やまぴー)
もし子どもに「学校に行きたくない」と言われたらどうでしょう?
かなり!!動揺すると思います、、、。
鎌倉さんが言う「なるようにしかならない」は決して諦めではありません。
親が動揺したって仕方ない、それなら美味しいご飯を作って子どもと食べましょう!
という前向きなメッセージです。他にも親の心持ちをたくさん教えていただきました。
取材時はとても賑やかな「りんごの木」でした。取材している間も鎌倉さんに話しかけてくる子ども達。自然体で過ごしている感じが印象的でした。
自分のことを自分で決めた子ども達はこの先もしっかり決めていけると思いました。(ゆきだるま)
取材にご協力くださった鎌倉さんに感謝申し上げます!!
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(2019年7月 byクワイエメンバー れいなママ、やまぴー、ゆきだるま)