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ハナブサデザイン 花房 茂さん

花房さん

伝統的手工芸品×アートで地域活性化へ

「越谷だるま」や「籠染め」などの伝統的手工芸品にアートを取り入れることで、新たな角度から越谷市の活性化に貢献する『ハナブサデザイン』代表兼デザイナーの花房 茂(はなぶさ しげる)さん。ご自身のこれまでの活動とともに、地域に対する想いをお聞きしました。

事業や活動内容を教えてください。

越谷だるまの端正なフォルムと張子の製法を生かし、独自のデザインを施した「だるまアート」や、籠染めと呼ばれる藍染技法で使われていた真鍮製の型を活用した「籠染灯籠」、越谷の風景を切り絵風にデザインした「越谷シルエット」など、伝統×アート、地域×デザインを軸とした越谷の魅力を伝える活動をしています。
また、前職の店舗デザイン、ディスプレイデザインで培った経験を生かしてアートイベントなどを行っています。最近では、イオンレイクタウンで市内の中学生約800名を超える生徒たちが授業の中で制作しただるまアートの作品の一部、約300個を展示するアートイベントを行いました。
近い将来、このような取り組みが越谷のまちに根付き、まちの人気アートイベントとなるよう育てていきたいと思っています。

過去の活動内容

なぜ数あるまちの中で越谷市を選んで起業されたのでしょうか。

都心へのアクセスが良く利便性が高い、自然が豊かなどの理由から、住むまちとして40年前に越谷を選びました。働きづめで体調を崩した時期があり、今後の仕事や人生を見つめ直す時間ができました。改めて地域のことを振り返ると、伝統工芸や情緒あふれる景観など、私の今後の活動の核となる魅力的な素材が数多くあるまちでした。
特に目に止まったのが、越谷張子だるま、ひな人形、甲冑、桐箱、都うちわ、ゆかた染色業などの伝統工芸の数々でした。
デザインやアートの経験を生かした仕事を考えていましたので、ものづくりが盛んなまちの魅力は大きかったですね。伝統工芸の職人さんがひたむきに伝統の技術を継承していく姿にかっこよさを感じたと同時に、何か応援することができないかと思い始めました。
地域に根差したデザイン活動をこのまちで始めたいと思ったのもこのときでした。

会社設立時ははいかがでしたか

全く新しい取り組みでゼロからのスタート、経営のノウハウがあったわけでもありませんし、越谷に知り合いもいなくて右も左も分からない状態で始めましたので本当に大変でした。
そんな中で「二番館(※1)」の創業支援を活用して、二番館のスタッフに支援いただいたおかげで、いまのハナブサデザインがあると思っています。親身になって相談を聞いてくださった皆さん、私の活動を受け入れ、指導してくださった市内の職人さんたちに、本当に感謝しています。

※1 越谷市産業雇用支援センター二番館(現在の「ビジネスサポートセンターこしがや」)。新たに事業を開始しようとする方、 また、事業開始後、間もない方などを対象に、経営課題等に関する診断・助言、各種コーディネート等の支援を行う相談窓口

「だるまアート」の制作秘話などはありますか。

越谷市だるま組合の工房で 初めて越谷張子だるまを見たとき、美術館に並んだ彫刻を鑑賞しているような気持ちになりました。越谷張子だるまの制作過程で使用する木型や、和紙を張り重ねたボディ自体が素晴らしいアート作品だと感じたからです。「伝統×アート」で越谷の伝統工芸を応援したいと思っていた私にとって本当に嬉しい出会いとなりました。
この越谷張子だるまの和紙で作られた原型(ボディ)からインスピレーションを受け、出来上がったものが「だるまアート」です。
最初に出来上がった作品は張子だるまの原型に模して英字新聞(和洋の対比の面白さ)を貼り付けた作品。その時代の出来事や情報を張り込むことで時代を纏った斬新な作品が誕生しました。
また、伝統工芸と伝統芸能を掛け合わせ作品に正義の味方(赤の隈取り)などの意味合いを持たせた描いた「歌舞伎だるま」なども制作しました。
だるまアートの制作を始めたのは2010年でした。翌2011年の東日本大震災の年を機に進行中の仕事がほとんど止まってしまい、地域活性化の仕事やそのための作品づくりに割ける時間が増えていきました。いま、だるまアートの中心になっているデザインの大半がこの数年の間にできたものです。

「だるまアート」

「だるまアート」や「籠染灯籠」の印象に残る出来事はありましたか。

籠染灯籠は2014年に日本テレビ「ぶらり途中下車の旅」など少しずつメディアでも取り上げていただけるようになりました。
市からの紹介で応募した「The Wonder 500TM(※2)」で2015年に籠染灯籠が選定され、日本テレビ「news zero」で放映された時には、“これで越谷の伝統工芸が日本全体そして海外に知ってもらえる”と嬉しく思いましたね。このプロジェクトでの選定がなければ、ここまでの知名度にはなっていなかったかもしれません。
2016年にはNHK「おはよう日本」で放映され、その後、アメリカのバラク・オバマ大統領(当時)にお土産として籠染灯籠が送られたときも非常に光栄でした。
2019年よりホテル雅叙園東京で開催される人気イベント「和のあかり × 百段階段」に展示されるようになり、日本各地から集まる有数な作品の中に越谷の籠染灯籠を日本のあかりとして加えていただきました。
2021年にはTBSテレビ「所さんお届けモノです!」で日光街道越ヶ谷宿の新名物として紹介されました。
旧日光街道沿いの店先をはじめ、越谷駅、市役所前の藤だな、こしがや能楽堂、そしてイオンレイクタウンなど、籠染灯籠の柔らかい和の灯が少しずつ広がり、越谷のまちを彩っています。
だるまアートは東京ミッドタウンで開催された「アートだるま展2016」を皮切りに、2020年にはグランフロント大阪ナレッジキャピタル主催の「World OMOSIROI Award」のメインビジュアル及びトロフィーに採用されました。
2021年よりイオンレイクタウンで「越谷だるまアート展」を開催し、越谷だるまとともに展示され、今年で5回目のお正月恒例の展示になりました。昨年からは市内中学生とのコラボ展も開催しています。
これらの活動が日経新聞「首都圏経済面」(2021年12月)や、東京新聞「地域活性化の取り組み」(2023年7月) に掲載されました。

※2 経済産業省による日本が誇るべき優れた産品500品目を選定し、海外に広く伝えていくプロジェクト

アートイベントの監修やデザインなども手掛けられたそうですね。

はい。2016年に東京ミッドタウンでだるまアートの展示と20名のアーティストとのコラボ展でのデザイン監修をさせていただき、2020年にグランフロント大阪で「World OMOSIROI Award」のメインビジュアルとトロフィーの制作を担当させていただきました。
この2つの開催地は私からすると東西のアートの聖地ともいえる場所で、最初に依頼をいただいたときは、話が大きすぎて、間違いじゃないかと少し疑ってしまいましたね(笑)
作品が認められたという達成感や、越谷だるまがより世の中の目に触れるようになる期待感などの様々な感情がこみ上げてきたことをいまでも覚えています。

「World OMOSIROI Award」の様子

その後、2020年頃からは市内での活動がより活発的になったように見受けられますが、何かきっかけがあったのでしょうか。

「越谷だるまアート展」の様子

イオンレイクタウンでお正月に展示した「越谷だるまアート展」の開催が好評でした。それから継続的にイベント等での展示が増え、市内での活動がより活発的になりましたね。アーティストや中学生とのアートイベントが始まったのもその時期からでした。

学生さんと伝統工芸のコラボは面白い組み合わせですね

アートイベントを通して、学生をはじめ多くの人たちが地域の伝統工芸や文化に興味を持つきっかけ作りになればと思い、開催しています。子どもたちの自由な感性で絵付けするだるまは、大人が思いつかないような面白い作品が出来上がります。私自身も学生さんたちから新たな視点や考え方などヒントをもらっています。自由な発想で楽しいイベントになっています。
それと、この「だるまアート展」が越谷でしか味わえない唯一無二のアートイベントになり、市内のみならず、市外からもこどもから高齢者まで、このイベント目的で訪れる人が増えて、地域活性化に繋がればいいなと思っています。
最近はメッセージ入りのランタンと共に籠染灯籠を展示したり、ランプシェードを学生さんたちと作成したりと、光のアートイベントにも力を入れています。

このような地域活動が評価され、2024年に地域振興に貢献した人に送られる「ベスト・アクション表彰」を受賞されています。受賞したときはどのようなお気持ちでしたか。

これまでに展示会を開催させていただいたり、作品や活動をメディアで取り上げてもらえたりという評価はしてもらったことはありますが、表彰していただくといった経験は特別でした。私が活動当初から掲げていた「地域貢献」が評価されて、非常に嬉しく思いました。

越谷の伝統工芸の職人さんへの想いを教えてください。

先代からいまに受け継ぐというのは非常に大変なことだと思います。
たくさんの職人さんやものづくりの会社が諦めずに自分たちの技術を磨いて、良いものを作っている姿を見ると尊敬の念がこみ上げてきます。これからも職人さん達が受け継いできた伝統工芸が未来に繋がっていくことを願っています。

説明をする花房さん

花房様にとってアート作品やデザインとは何でしょうか。

花房さんの作品

難しい質問ですね・・・(笑)
地域の活性化には欠かすことのできない1つの大きな要素だと考えています。
地域資源にアートやデザインを掛け合わせることによって新しい魅力(エネルギー)を創り上げること。まちをキャンバスに楽しみながら関わっていけるクリエイティブな活動でしょうか。
いまは伝統工芸の活性化や、まちの資源をデザインすることがとても楽しいです。自分の楽しいと思えるデザインやアート活動をベースにまちを応援できる今の仕事が天職だと思っています。
ハナブサデザインを起業するときのキャッチコピーが「デザインの力で、もっと楽しく!もっと元気に!」だったんですよ。これからも、デザインやアートの楽しさや発信力を生かし、伝統工芸を応援していきたいと思います。

越谷市を一言でいうと・・・

花房さん

「一言で言えないくらい面白いまち」

越谷レイクタウンの誕生により、越谷は新旧を併せ持つ都市となりました。「新」は日本最大級のショッピングモールがあり、年間5000万人が訪れる集客交流のまち。「旧」は歴史ある日光街道沿いの蔵のあるまち並みや伝統的手工芸品などコンパクトながら魅力ある地域資源があるまち。その両面に光を当て、そこに越谷ならではのストーリーが加わり、一言では語り切れないまちの魅力が生まれて来るのではないでしょうか。

紙飛行機を持つ花房さん

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