【消費者庁より注意喚起】棺内のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意！

　ドライアイスは、食品の保冷輸送など様々な場面で利用されている消費者に身近な冷却材です。氷よりも温度が低く、液体にならず食品等が漏れることがないため便利ではあるものの、取扱いによっては事故につながるおそれがあります。
　皮膚との接触による凍傷や、密閉容器内でドライアイスが気化(昇華)して内圧が高まり破裂したことにより負傷する等の事故が起きていることから、消費者庁では平成29年7月に注意喚起を行いました。
　しかしその後、葬儀の際、ご遺体の保冷目的で棺内に置かれていたドライアイスによる二酸化炭素中毒が疑われる死亡事故の情報が消費者庁に寄せられました。

1.事故事例

【事例1】
　葬儀場において、ドライアイスを敷き詰めた棺桶の小窓を開けたそばで、意識不明の状態で発見され、搬送先の病院で死亡した。(令和3年5月　70歳代　宮城県)

【事例2】
　葬儀場において、ドライアイスを敷き詰めた棺桶内に顔を入れた状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。(令和3年3月　宮城県)

【事例3】
　自宅において、ドライアイスを敷き詰めた棺桶内に顔を入れた状態で発見され、死亡が確認された。(令和2年2月　60歳代　沖縄県)

　上記の事例は、葬儀に参列する人がいる状況ではなく、周囲に人がいない中で故人とゆっくり別れを告げる時間を過ごし、棺の中の故人に向けて話しかけるなどしている際に事故が起きているものと推測されます。ご遺族等にとって、葬儀は非日常的な場面であることから、棺の中でドライアイスが気化し、二酸化炭素が充満していることの危険性を認識できていない状況が考えられます。

棺内を覗き込む様子(事故時のイメージ)《消費者庁ホームページより引用》

2.二酸化炭素中毒による人体への影響

　二酸化炭素中毒は、酸素濃度が十分にあっても生じるとされており、高濃度の二酸化炭素はそれ自体の有害性が過去の事故等から知られています。また、症状を自覚してから意識消失までの時間が短いため、自身で安全なところに移動するなどの行動が困難であるほか、転倒や転落などの被害も考えられます。
　ドライアイスによる二酸化炭素中毒の事故は、ドライアイスの製造、輸送、貯蔵過程での労働災害が多く、消費者の事故はあまり例がありません。葬儀中の事故事例では、ご遺族等が棺の中に顔を入れて高濃度の二酸化炭素を吸入して意識を失い、そのまま心臓停止に至ったものと推測されます。

3.消費者へのアドバイス

葬儀の際、ご遺体を安置する環境においては、以下に注意しましょう。

1.棺の中に顔を入れないこと
　安置されているご遺体に話しかける等の際は、棺の中に顔をいれて高濃度の二酸化炭素を吸い込まないようにしましょう。

2.室内の喚起を十分に行うこと
　棺は完全に密閉されているわけではないため、内部の二酸化炭素は室内に漏れ出ています。室内に二酸化炭素が滞留しないよう、十分な換気を行いましょう。
　　
3.線香番などで一人にならないこと
　通夜から告別式の間に、慣例としてご遺族が寝ずの番(線香番)を行うことがありますが、万が一に備え、なるべく複数人で見守りましょう。

4.気分が悪くなったらすぐに棺から離れ、異常があれば直ちに119番通報を
　棺に顔を近づけて気分が悪くなったら、すぐに棺から離れて換気の良い場所に移動しましょう。症状があれば医療機関を受診してください。呼吸や意識に異常があるなどの緊急性が高い場合は、直ちに救急要請をしましょう。

5.不明なことがあれば葬儀業者に確認を
　棺の窓や蓋の開閉等、棺を取り扱う上で不明なことがあれば、葬儀業者に確認しましょう。