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越谷市 Koshigaya City

ページ番号は58609です。

能楽師 関根 祥六さん

秘すれば花。伝えたいものを内に秘め、心で舞うのが能の真骨頂。それを感じ取ってもらいたいです

七百年の歴史を持つ能楽を今に伝える能楽師の関根祥六さん。
傘寿を迎えた昨年は、万博開催を祝して行われた上海公演やAPEC(エイペック)横浜記念公演などの大舞台で能を披露。秋の叙勲で旭日小綬章を受賞しました。また、市内の小学生を対象にしたこども能楽劇場の開催など、能楽の普及に尽力しています。
稽古場を訪ね関根さんの能に対する思いを伺いました。

プロフィール

1930年10月28日、能楽師・関根隆助の六男として、南埼玉郡蒲生(現越谷市)に生まれる。
蒲生尋常小(現蒲生小)を経て、粕壁中(現春日部高校)卒業。
幼少期より能楽師の兄直孝に師事、4歳で初舞台。1951年に二十五世観世宗家元正(左近)に内弟子入門、1956年に筆頭弟子として独立。
国立能楽堂能楽研修の主任講師等を務め、後進の指導、能楽の普及にも貢献する。重要無形文化財総合指定保持者。日本芸術院賞等受賞歴多数。2010年旭日小綬章を受章。

能には人生の教えがたくさん詰まっている

観世流シテ方の能楽師で能楽界の重鎮、関根祥六さんは、昨年、秋の叙勲で旭日小綬章を受けました。また、昨年の11月には、各国の首脳・閣僚や関係者を集め開催されたエイペック横浜の記念公演で能「羽衣」を披露しました。
「舞を見せるという人もありますが、私にはお見せするという心はいまだになく、自分なりの舞をするだけです。観客はそれを見て、自由に感じてもらえればうれしいです。『秘すれば花』という言葉があります。外に向けて表現するのが一般的な演劇。能は、すべてを見せずにしまい込む、喜怒哀楽を内に秘めます。(観客が)それを見抜くことが大切です。そこに能の品格があり、深さがあります」。
「秘すれば花」は、能の創始者というべき世阿弥が遺した言葉。能には人生の教えがたくさん詰まっています。それを学ぶのが能なのだと、関根さんは話します。
関根さんは、兄直孝さんから能の教えを受けました。
「あるとき、兄からあの柳はなぜ揺れているかときかれました。しばらく考えて『風が吹いているから』と答えると、兄は『風は見えるかな』と。後は自分で考えなさいということでした。こうして心で舞うことを教えられました」
昨年5月から10月にかけて開催された上海万博の期間中に中日演劇名優公演が開かれました。この公演で、関根祥六さんは、歌舞伎の坂東玉三郎さん、中国京劇の名優と競演、それぞれ「楊貴妃」を演じて話題となりました。また子息の関根祥人さん、孫の祥丸さんと三代で共演を果たしました。この上海での公演を終えた数日後、祥人さんが急逝されました。
「謡に『人楽しみ、人愁う、これ皆世上の有様なり』という言葉があります。人生には楽しいこともあれば悲しいこともあります。あらゆることが浮世の常。祥人は、稽古を終えた直後、見事に逝ってしまいました。なすべきことをなして神に召されたのでしょう」

自然の中で遊んだ経験が芸にも生かされている

「私の実家は登戸にあります。子どものころ、蒲生駅を降りて旧日光街道まで来ると一面田んぼでしたから、自分の屋敷が見えました。近くに用水があって、冬枯れの用水路に降りてチャンバラをしたりして遊びました。ツバメが飛び、田植えが始まるころにはきれいな水が流れてきました。流れてきた藻が竹棒に引っかかり、ひらひらし、やがてツーと抜けていく。それを眺めるのが好きでした」。
謡の稽古のときに、藻が引っかかり抜けていくリズムが、謡の節回しと同じものだと気づいたとか。越谷の豊かな自然で遊んだ体験が能の中に息づいています。

稽古では鬼の祥六教えのレベルは下げない

普段は温厚な関根さんですが、稽古になると、鬼の祥六と呼ばれるほど厳しい師匠に。「人を導くときに、レベルを下げてはいけないんですね。今は、わからないならこうしてあげようと、レベルを下げてしまう。絶対に下げられない線があって、そこまで来るように引き上げることが、導くということです。『師厳しからざれば、道尊からず』。教えが厳しいからこそ、その道が尊い。いい加減に教えていたら、その道はすたれてしまう。兄の教えです」
能は特別なものではない、日常茶飯のこと、喜怒哀楽、人生そのものを演出し、それを舞うのが能と、関根さんは話します。
「能を好きになるには……。能を好きになる自分を好きになること。そのためには、能の稽古をしたり、能を観たりすることです。越谷には立派な能楽堂があり、恵まれた環境にあります。ぜひ能という文化に親しんでもらいたいですね」

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広報こしがや季刊版平成23年冬号に収録

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