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越谷市 Koshigaya City

更新日:2016年12月16日

ページ番号は58614です。

画家 高橋大輔さん

「厚塗りの抽象画」という今までの自分らしさを打破して、新しい絵を創造したい

 平面的な油絵とは一線を画す、絵の具をたっぷりと塗り重ねた立体的な作風で知られる画家・高橋大輔さん。大胆さと繊細さが入り混じったタッチで色彩豊かに描かれた作品には、思わず触れたくなるような独特な存在感があります。そんな個性的な作品が生まれたきっかけ、また今後の活動について伺いました。

プロフィール

昭和55年、越谷市生まれ。現在は小川町在住。越谷東高校卒業後、1年の浪人期間を経て、東京造形大学に入学し、平成17年に同大学・造形学部美術学科絵画専攻を卒業。
卒業した年に初の個展『象風景』を開催。以降、毎年さまざまなスタイルの個展やグループ展を行う。今年9月から11月に埼玉県立近代美術館で開催された『NEW VISION SAITAMA 5 ()り出す 身体 (しんたい)』では、約70点もの新作を発表するなど、意欲的な活動を続けている。

製作期間17カ月!苦しんだ末に大作が完成

 今秋、埼玉県出身の若手芸術家7人を集めて埼玉県立近代美術館で開催された企画展で、約70点に及ぶ新作を発表した高橋さん。この企画展では展示する空間をどうおもしろく表現するかということにこだわり、作品を仕上げていったと言います。

「今回、特に苦労したのが80号(97センチ×147センチ)の油絵。透明感を大切に描き進めて、僕の中にあった最初のイメージは薄い青だったんですが、描きながらああだこうだと試行錯誤して。結局、完成したと思えるまでに17カ月かかって、仕上がりは当初のイメージとはほぼ違うものになりました(笑)。見てくださる人に伝わるかどうかは分かりませんが、僕自身は絵の具がどんなに塗り重なっていても透明感を意識して描けたと思っています」と高橋さん。

 高橋さんの絵は正面から見ても絵の具の隆起がよく分かりますが、真横から見るとその厚みに驚くばかり。でも絵から受ける印象に厚塗りの重苦しさはありません。

「作品を創るときにいつも思っているのは絵画でありたいということ。僕にとっての絵画とは、平面であっても奥行きや空間が感じられるもの、そして汚く濁っていないもの。80号の絵の透明感もそうですが、描き始めるときは自分が目にした美しい色のイメージがベースになることも結構あります。例えば気持ちのいい越谷の土手の草の色を再現してみよう!と思ってキャンバスに向かい、イメージを色に込めて、即興演奏のように重ねていくのが僕の描き方です」

恩師の一言から「抽象画」そして「厚塗り」へ

 「幼稚園のとき、友達が描いた絵が上手なのに驚いて、思わずその絵を模写したことが僕が絵を描いた最初の記憶」という高橋さん。

 幼い日から絵を描くことへの興味は尽きることなく、中学1年生のころ、恩師の薦めもあって美術系の大学へ進みます。

「予備校のころから写実の画家たちに影響を受けて、具象画を描いていました。ある時、そんな僕の絵を見た予備校の先生に写実は訓練すれば誰でもできるし、既に巨匠もいる。これから君がそれをやっても超えられないんじゃないかなと言われて、はっとしました。そこから抽象画というジャンルを意識するようになりましたね」

 また高橋さん独特の厚塗りの手法への転換も、お世話になった教授のひと言がヒントに。

「僕の2回目の個展を見に来てくれた教授が、僕の絵を眺めながら不意に彫刻家の宮脇愛子さんの描く絵は重いんだよねと言ったんです。その言葉が僕の中にすごく引っかかって、絵が重いってどういうことだろう?と考えていくうちに、どんどん塗り重ねる絵の具の量が増えて、現在のスタイルになりました」

ふつふつと湧き上がる「変わりたい」願望

 20代後半で現在の作風にたどりつき、30代に入ると、日本画から創作意欲をかき立てられることが増えたと言います。

「僕は画家だからというより単純な美術ファンで、美術館には結構足を運びます。好きな作家の展覧会にも行きますが、お気に入りはどこの美術館にもある常設展。常設展はあらゆる時代やジャンルのものが見られるのがおもしろくていろいろな発見がある。そんな鑑賞の中で、日本画のおおらかなタッチに引かれるようになりました。最近気になっているのは、浦上玉堂という江戸時代の文人画家。山水画などを多く描いていますちょっと異様な作風がイイんです」

 厚塗りの作風が定着して約10年。現在の高橋さんには、変わりたい願望が。

「この描き方でできる表現の限界も見えてきた。周囲が厚塗りイコール高橋大輔らしさと認識しているのと同時に、僕自身がその作風にとらわれている感じもしていて。作風を捨てるのはすごく勇気がいることですが、そのくらいの覚悟を持たないと変われないのも事実なので、今はいろんな手法を模索しているところ。もしかしたら厚塗りでも、抽象画でさえなくなるかもしれない・・・といいつつ、数年たっても見た目は何も変わっていない可能性もある。まだ未知数ですね」

阿波踊りが大好き 見ると疲れが吹き飛ぶ

 高橋さんは現在、奥様と3歳になる娘さんと一緒に小川町に在住。実家のある越谷には、よく訪れているそうです。

「越谷で好きなのは川。絵のアイデアを考えるために土手をブラブラしたり、ジョギングすることもあります。それからなんといっても南越谷阿波踊りが大好き!小学5年から中学1年までの3年間、踊り手をやっていたこともあるんですよ。去年は娘を連れて見に来ました。今年は用事で越谷に来た日が偶然阿波踊りの日で、駅を降りたら鳴り物の音が聞こえて来たんです。その時僕はちょっと疲れていたんですが、阿波踊りの音を聞いたとたん、疲れがパァ〜っと吹き飛びましたね」と笑顔で語る高橋さんは、子育てにも奮闘中のようです。

「10代20代のころは、18時間ぶっ続けで絵を描いたこともありましたけど、いまは娘にも手が掛かるので、そこまで絵に没頭できない。でもそういう日々の暮らしと向き合いながら、新しい絵の世界を生み出していけたらいいなと思っています」

 穏やかな口調で話す姿に、娘さんの成長や日常生活を大切にする優しい人柄がにじみ出ている高橋さん。
 これからどのようなアートを発信してくれるのか、とても楽しみです。

インタビュー記事のダウンロード

広報こしがや季刊版 平成28年冬号(平成28年12月15日発行)に掲載

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ファクス:048-965-0943

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